やっぱりラリーが好きなのだっ!〜編集代表のラリーな日々ブログ〜

フィンランド・スペシャル。

ラリー・モンテカルロの表彰台のトップ2は、昨年、フォルクスワーゲンの撤退によってシートを失った二人が占めることになりました。わずか2回のマーマックテストで優勝したオジエ、そして新天地トヨタを選んだヤリ-マティの驚異的な2位。新時代を占う意味では、とても興味深いポディウムになったように思いました。

正直に言うなら、僕はオジエがトヨタを選ばなかった時点で、ヤリスの表彰台を想像さえしていませんでした。程度の差こそあれ、ライバルたちが時間をかけて熟成させてきた旧スペックWRカーを進化させたマシンであるのに対して、ヤリスがわずか1年前に走りはじめたばかりの完全なニューマシンであることを思い起こせば、さらなる苦しいデビューになる覚悟はトヨタにさえあったはずです。
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冷静な目でみれば、最初の3日間を終えてトップのヌーヴィルから3分近く遅れたヤリ-マティの速さはいまのところヒュンダイの1kmあたり0.7秒遅れといったところでしょうし、初日のコースオフで40秒をロスしたオジエが最終的に2分以上の差つけて優勝したことから、表彰台の1位までは1kmあたり0.5秒近い差がまだまだあると分析できるのかもしれません。しかし、1年もの開発期間の末に2014年モンテカルロでデビューしたヒュンダイが全滅に終わったことを考えれば、新チームであるトヨタがニューマシンでみせた速さと可能性は無限大とも言えるものでした。

それではなぜ、オジエがヤリスを選ぶことをせず、ヤリ-マティがその可能性を見いだしたのでしょうか。オジエはターマックでヤリスをテストしたあと、「あのようなクルマは乗ったことがない」と知人に語ったそうです。オジエにとっては違和感のあるマシンだったはずが、モンテのあれだけの難しいコンディションでミスなく走りきったことからも、ヤリ-マティにとってはかなりしっくりきているマシンであるように思えます。

オジエの語ったという言葉は、リチャード・バーンズやフレディ・ロイクスらが、かつてトミ・マキネン・スペシャルと呼ばれたランサーエボリューションについて「走れた代物ではない」と嘆き、最後までこの怪物を乗りこなすことができなかったことを想起させます。

かつて三菱が黄金時代を築いたとき、電磁クラッチ式のアクティブデフをもつ特殊なランサーエボリューションを走りこなせたのは、マキネンただ一人だったとも言われています。このマシンは、コーナー手前でアクセルを抜いてブレーキを踏んでターンを開始した瞬間、スピンを開始するようなプログラムが組まれ、それを回避するたった一つの方法は、アクセルを決然と踏み抜くしかないという、最速を生むための恐ろしいコーナリングロジックで作られていました。

ヤリ-マティはVWにいた時代、どれだけ走ってもしっくこなかったオジエがつくったマシンにうまく自らのドライビングをあわせようとして、けっきょく成功しなかったわけですが、ひょっとしたらマキネンが手がけたヤリスとヤリ-マティのコンビネーションは、かつてマキネンとランサーエボリューションが見せたような輝きをみせてくれるのかもしれません。

フライングフィンのためにフィンランドで生まれたフィンランド・スペシャル。そう考えると、ヤリ-マティがモンテでみせた速さも、妙に納得がいくものに思えてくるのです。


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