R4キットのサプライヤーとしてオレカが決まったというニュースを紹介しました。R4キット規定はすでに1年前、その実態がほとんど見えてない状況のなかで摩訶不思議なことにワールドラリーカウンシルで正式に導入が承認されるという、まさしくラリーの革命児にふさわしい怒濤の誕生を迎えました。そして昨年末のテクニカルレギュレーションが決まり、その入札の結果、オレカがサプライヤーに決定したというわけです。
R4キットの内容は、エンジン、トランスミッション、足回りなどがセットになり、つまりもう自動車メーカーはお金をかけてラリーカーを開発しなくても、これらの安価なコンポーネンツをポンッと組めば、どのブランドのクルマでもカンタンにラリーカーに出来るというわけです。
簡単に言ってしまえば、田宮のラジコンみたいに、カウルを変えれば、あとはセリカでもデルタでもお好みのままってやつですよ! アルゼンチンのMAXIラリー規定やニュージーランドとオーストラリアで生まれたAP4規定があれだけ成功して儲かるなら、そのルール作りを俺たちがやっちゃおうぜ、という発想がFIAの偉い人の頭にはあったと思います。
どの国のディーラーにもふつうで買うことができることが、ラリーカーのホモロゲーションの原点になっていることが忘れられようとしていることは危惧すべきことですし、あのラリージャパンの興奮を思い出せば、誰だって、ラリーカーはプロダクションカーがベースでなくちゃだめだってわかるでしょう。
けれど、あまりに時代は急激に変わってしまい、三菱をはじめとしてほとんどのメーカーが安価な4WDラリーカーを販売しなくなった以上、もはやないものをねだっても、世界選手権もローカル選手権も瀕死状態からどうにも抜け出すことができないというわけです。
R5マシンだって、フォード、シュコダがそれぞれこの2〜3年で販売台数100台突破するくらい驚くべき勢いで売れているわけですが、世界的にみれば、2800万円もする高いクルマを走らせることができるチームやドライバーはまだまだ少なすぎます。
ランエボやインプの代わりとして世界中で絶大な支持を得ることになるのかどうかはわかりませんが、およそ2000万円を切ることになりそうだと試算されるR4キット・ラリーカーの登場によって、間違いなく5年先には世界中でラリーカーの台数は増えているでしょう。
しかし、ラリーカーがプロダクションカーと結びつきを失った先のラリーの人気はどうなっているでしょうか。主催者もチームもドライバーもハッピーだけど、僕らファンはファンのままでいられるでしょうか。よくわからないままに、ラリーはまた一つ、開けてはいけない匣を開けてしまったのかもしれません。飛び出すのは災いの未来でないことを願うばかりです。