マキネンがチーム代表に就任したことで、大きく第一歩を踏み出したかのようにみえるトヨタのWRCプログラム。しかし、彼が欧州のどこかに新しいファクトリーを作って、ヤリスWRCをゼロから製作する考えにあると聞くと、せっかくすっきり晴れたはずの胸の奥がなんだかまたしてもモヤモヤです。
TMGがどうなってしまうのか、せっかく開発したヤリスやGREがどうなってしまうのか、トヨタのファクトリーマシンの代名詞ともいえるK-AMナンバーがなくなっちゃうのかと、なんだか疑問符だらけでどうにもすっきりしない状況です。
もちろん、かつてWRCで黄金期を築いたエンジニアたち、ケルンコマンドと呼ばれたテクニシャンはすでに誰一人としてTMGにいるわけではないのですから、もはやケルンにこだわる理由はないのでしょう。けれど、ここ数年間、トヨタの復帰にむけてささやかな活動を行ってきたTMGの小さなうごき一つ一つを追い続けてきたファンの人たちの目にこの急速な展開がどう映るのか気がかりです。
ラリーXでは昨年12月31日、一年を締めくくるニュースとして「トヨタのWRC復帰、1月末発表へ」と報じました。この記事のなかで、トヨタがラリープログラムのために新しい欧州ベースを築くという噂があることを紹介しました。モータースポーツ中枢にいる関係者でさえ当時、真顔でこの情報を否定したわけですから、関係者にとっても今回の話がいかに衝撃だったか想像に難くありません。
あの噂からこれまで7カ月近くもの期間があったわけですから、新しい基地やエンジニアリング体制などが水面下で完璧に整っているかと思いきや、あまり多くのことが進んでいないのはさらに気がかりです。しかし、いずれにしても待ったなしで時代は変わろうとしているということでしょう。
チーム総代表が、ワールドチャンピオンを目指すためにはすべてをゼロにして、新たなベースを築くという選択がベストであると判断をしたのであれば、僕らは、いまは、その重い決定を信じるしかありません。
信じようじゃありませんか。たとえK-AMナンバーが消えたとしても、世界最強のトヨタが帰ってくるなら僕らはそれでもいいですよっ!