まるで廃車置き場で撮影されたような埃をかぶったエンジン。こちら2月16日に納車された時のレオーネのエンジンです。
今から思いかえしても、よくぞまあ、こんな回るかどうかわからない状態のものを手に入れたものだと呆れます。
しかし、ナンバーが付いた以上、よっしゃーと腕まくりして、いますぐエンジンを下ろして、部品を全部外して、一つ一つのパーツをリフレッシュする作業、やったるでぇー! なんて思っていたのに、いざ始めようとすると、僕の優柔不断な性格もあるのでしょうけど、なかなかその一歩が踏み出せません。
クルマにはこれまで30年にわたってさまざまなオーナーの手が入って修理や改造が加えられたところも多々あり、それらをすべてオリジナルの状態に戻したいと願いつつも、そもそもオリジナルがわからないところも多く、ましてや部品も揃わない以上、なかなかエイヤッで作業にとりかかるわけにも行きません。
さらにもっとも悩ましいところは、直すにしてもどこをゴール地点にしたらいいのか、というところ。ふつうのクルマなら、全部パーツを下ろして、塗装を全部剥がして、ボディの傷んだところを板金して再塗装すればいいのでしょう。しかし、サファリを走ったことでしか生まれない、へこんだボディ、エンジンルームに飛沫となって吹き飛んでいる鉄分をふくんだ赤土、それらをどうこのクルマに残して伝えるべきか。そんなことを考えていると作業はもう一歩も前に進まないのです。
・・・とりあえずゴールも見えないので、汚いエンジンルームをきれいにしようじゃないかということで、試しにプラグケーブルの土埃をクイックブライトで洗い落としてみたところ、まあ、なんということでしょう! あのきたないケーブルから実にきれいな赤色が蘇るじゃありませんか。
あまりにもうれしかったので、それからは、寝る前に1時間だけ深夜の駐車場に下りて、とりあえず手が届くところだけ、ごそごそと洗う毎日が始まりました。小さな歯ブラシでケーブルを1本1本、数日でナイロンの歯ブラシは駄目になってしまうので、豚毛の小さなブラシを買ってきて、自分の歯を磨くよりも丹念に磨きます。もちろんボディの赤土を洗い落とさないように養生(!)して!
そんな作業を続けて1カ月半。最初はきれいになったことに新鮮な驚きを覚えたものの、長く続けるとあんまり変わりばえしないなあ、なんて作業に飽きてきたので、以前の写真を取りだしてみたら、おお、なんということ! 廃車のエンジンにはもう見えないじゃないですか!
え? あまり変わったように見えないって? うーん・・・。まあ、たしかに。でも、いくらきれいになったところで性能にはなんの変わりもないのでしょうけど、不思議なことに以前よりちょっとだけ気持ちよく回るような気もするのですよ。